レビュー論文に入り込むバイアスの種類


レビュー論文とは、ある研究分野における著名人がその分野をサマーライズした論文のことである。総説論文とも呼ばれる。

レビュー論文を作成するにあたって、著者が「文献を引用して論説を述べる」という行為において入り込みうるバイアスの種類について把握しておくことは大変重要なことです。一般のオリジナルアーティクルならば、introduction, material & method, resultまでは比較的フェアなものである可能性が高く、discussionの所で著者の解釈が入ってきます。それに対して、レビュー論文は基本的に既知の知識を基に構成されていくため、さまざまな部分でバイアスが入り込む余地があります。

以下にバイアスの種類を上げます。
  1. タンス論文バイアスと
  2. 言語バイアス
  3. 報告バイアス
  4. 文献収集バイアス
  5. 質的バイアス
  6. 個人バイアス
1.タンス論文バイアス
統計学的有意差が出なかった論文や、面白い結果が出ずにお蔵入りになっている研究は圧倒的に多く、出版されているのは行われた研究のうち、面白いデータが得られたほんの一部のものであることからくるバイアス。

2.言語バイアス
重要な結果の出た研究は英語論文として発表される傾向があり、そのため執筆者は英語の論文しか引用しないことからくるバイアス。

3.報告バイアス
研究者が自分の研究においてさまざまな結果が出たにも関わらず、有意差のあるアウトカムだけを選んで論文にすることからくるバイアス。

4.文献収集バイアス
電子検索方式に関係する。文献収集方法によって、特定の論文を見落としてしまうことによるバイアス。

5.質的バイアス
質の低い研究でバイアスを含む可能性のある論文を引用したとしたら、総説自体もバイアスを含む可能性があることからくるバイアス。

6.個人バイアス
意識的にせよ、無意識にせよ、執筆者が総説を結論づける際に個人的な考えを反映させることからくるバイアス。例えばディスカッションにおいて、いくつかの論文にのみ特別に焦点を当て、他の論文をまったく引用しないというような具合である。

これらのバイアスを眺めてみると、私たちが何かの報告を基にして意見を述べる時に入りうるバイアスと共通しているものが多い気がします。

最後にシステマティックレビューについて紹介します。

システマティックレビュー(系統的レビュー/ Systematic review)とは、あるテーマに関する既存の研究論文を網羅的にか頼りなく収集して、メタアナリシス(meta-analysis)と呼ばれる統計学的手法を用いて解析したものです。

【参考文献】
Stuart Porter著 武田裕子訳 『ここからはじめる研究入門』医学書院igakushoinn 2011 104 - 107